マンガ銀行Illustration by 次原隆二

マンガ銀行構想
未来永劫作品を守り、その価値をつなぐ仕組みを考える

きっかけ

 マンガ制作のデジタル化が始まった頃から、
私たちは一つの危機感を抱いていました。
実際に、保存媒体の故障やフォントの消失、
アプリケーションのサービス終了などによって、
原稿データが開けなくなるケースを数多く目にしてきました。
 作品を守るには、データを保存するだけでは足りません。
必要なのは、将来にわたって作品データを
活用できる状態に保ち続けることです。
そんな考えから、2018 年には社内の作品データを
クラウドへ移行する取り組みを開始しました。
業界でも、かなり早い取り組みでした。
 しかし、クラウドへの保存はゴールではありません。
その後、マンガイベントや SNS などを通じて
マンガ家や編集者をはじめとする多くの関係者から、
原稿データの⻑期保管に関する声が上がっていました。
私たちが以前から感じていた課題は、
業界全体に共通する課題となりつつありました。
こうして始まったのが、「マンガ銀行」構想です。

まずは、安全に保管することから

 マンガ銀行構想の実現に向けた第一歩としてすでに実装しているのが、
作品データを安全に保管するためのストレージサービスです。
作品データを国や地域をまたいだ十か所以上へ分散保存し、
自然災害だけでなく、万が一の戦争なども見据えながら、
作品を確実に守る仕組みの実現を目指しています。
 さらに、将来ソフトウェアや OS が変わっても作品を完全な形で開けるよう、
⻑期保存を前提としたデータ形式についても研究・設計を進めています。
マンガ銀行が目指すのは、作品を未来永劫、
活用できる状態で受け継いでいくことです。

作品の価値を未来へつなぐ

 このプロジェクトの名前を考えるなかで思い至ったのが、
「銀行」という存在でした。
銀行に預けた資産は、安全に保管されるだけでなく、
時間とともに利子を生み、新たな価値を生み続けます。
作品もまた、⻑く確実に守られることで、
ライセンス展開や翻訳出版など、
新たな展開につながる可能性があります。
データが整理され、必要なときに必要な情報を
いつでも取り出せる状態だからこそ、そうした展開にも迅速に対応でき、
読者や市場との出会いを広げ、新しい価値を生み続けることができます。
 マンガ銀行は、作品を守るだけではなく、
作品から生まれる価値を未来へつなぎ、
その価値を作家へ還元し続けることを目指した構想です。
私たちは、こうした取り組みがマンガ文化を未来へ
受け継いでいくことにつながると考えています。