きっかけ
コアミックスでは以前から、海外のマンガ家との共同制作を行ってきました。
そのなかで、代表の堀江をはじめとする関係者は、
言語や文化の違いによるコミュニケーションの難しさに直面していました。
通訳や翻訳ツールを介して言葉のやり取りはできます。
しかし、マンガ制作の現場においては、それでは十分ではありません。
ネームの意図、コマ割りの演出、キャラクターの心理描写。
マンガ制作では、言葉だけでは説明しきれないものを
共有しなければならない場面が数多くあります。
言葉は通じているはずなのに、互いのイメージに
ズレが生まれてしまうことも少なくありませんでした。
そんな現場を見ていた Mai 研究室のあるメンバーに、想いが生まれます。
「もっと相手の想いを聴けるようにしたい」
「もっと深く対話できる環境をつくりたい」
メンバー自身もまた、⻑年の海外生活や多文化環境での仕事を通じて、
言語コミュニケーションの難しさと向き合ってきました。
言葉は理解できるのに、意図が伝わらない。
翻訳は正しいのに、会話が噛み合わない。
そのもどかしさを知っていたからこそ、
「解決できるかもしれない」という直感がありました。
聴くための技術
「MaiTALK」は、単なる翻訳ツールではなく、
多言語コミュニケーション支援システムです。
開発の出発点は、「どう翻訳するか」ではなく、
「どうすれば相手をより深く理解できるか」という問いにありました。
そのため MaiTALK では、コミュニケーションの本質を
「聴くこと」にあると捉えています。
相手の発言内容だけでなく、その会話の文脈や背景、
専門分野における独特のルールも踏まえながら、
より自然な対話を支援する仕組みを構築しています。
また、会話を重ねるなかで専門用語や現場ごとのルールを学習できるため、
専門的な現場や複数の言語が飛び交う環境にも柔軟に対応しています。
このような実践的な設計こそが、MaiTALK の大きな特徴です。
マンガから社会へ
MaiTALK は、海外作家との共同制作で直面した
課題から生まれたプロジェクトでしたが、
開発と実証を重ねるなかで見えてきたのは、
この課題はマンガ制作の現場だけに存在するものではないということでした。
言語や文化の違いを越えて、互いが深く理解し合うことの難しさは、
さまざまな現場に存在しています。
例えば、インバウンド向けの観光や接客の現場では、
お客様とのこまやかなコミュニケーションが求められます。
医療や公共機関では、正確な情報伝達が人命や安全に関わる場面もあります。
国際共同研究や多文化チームによるプロジェクトでは、
言葉だけではどうしても埋められない認識の違いが存在します。
MaiTALK が目指しているのは、単なる翻訳ではありません。
人と人との対話を支え、相互理解を深めることです。
多国籍な編集会議で生まれていた、ニュアンスが伝わらないという課題。
それに応えようとした一人の研究員の挑戦から始まったこの取り組みは、
いま、多言語社会における新しいコミュニケーションのあり方を
探究するプロジェクトへと広がっています。

